メルマガ♯がんばろう、日本!         №218(16.11.28)

━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━

「がんばろう、日本!」国民協議会

http://www.ganbarou-nippon.ne.jp

==================================

Index 

□国境を超える民主主義のイノベーション 

 暮らしの現場、自治の現場からこそ見えてくる普遍的課題

 ●「グローバル化・国家主権・民主主義」のトリレンマと、民主主義のイノベーション

  衰退途上国か、課題先進国か

 ●諦めるなどという贅沢はありません、いいですか?

□「囲む会」「望年会」のご案内 

==================================

国境を超える民主主義のイノベーション 

暮らしの現場、自治の現場からこそ見えてくる普遍的課題

==================================

【「グローバル化・国家主権・民主主義」のトリレンマと、民主主義のイノベーション

 衰退途上国か、課題先進国か】

 自由と民主主義の国アメリカで、差別発言を繰り返してきたトランプ氏が次期大統領に選出された。自由・民主主義は、人権の尊重や社会的連帯のためのツールである一方で、憎悪と対立を増幅するツールともなりうるのだ。ナチズムの歴史的教訓をふまえて、私たちは21世紀における民主主義のイノベーションという課題に直面している。

 いち早く面談に駆けつけたわが総理は、トランプ氏を「信頼できる」と言った。ドイツのメルケル首相は「人権と尊厳は出身地、肌の色、性別、性的嗜好、政治思想を問うことなく守られるべきだ」と警告している。

 新TPP(TRUMP PUTIN LE PEN=仏国民戦線党首)という造語に見られるような状況は、二度の世界大戦の犠牲のうえに曲がりなりにも共有されてきた普遍的な価値と、それに基づいて築かれてきた内外の秩序が大きな挑戦にさらされているといえる。来年はフランス、ドイツで大統領選挙、国会議員選挙が控えている。イギリスのEU離脱、トランプの「アメリカ・ファースト」がEUの中軸にも飛び火すれば、それこそ「魚は頭(先進国)から腐る」ことになる。

いまや先進国リスクの時代だ。「ダニ・ロドリック米ハーバード大教授は主著『グローバリゼーション・パラドクス』で、『グローバル化―国家主権―民主主義』はトリレンマ状態にあると論じた。

国家主権と民主主義の連結により、グローバル市場に背を向けることはできる。また国家主権がグローバル化と結びつき、民主主義を犠牲にすることも可能だ。あるいは国家主権を犠牲にして、グローバル化と民主主義を選び、グローバルガバナンス(統治)と世界民主主義の組み合わせを構想することもできる。けれども、3つを同時に成立させることはできないという。

これは現代の先進国リスクを暗示しており、ほぼ例外なく民主主義的である先進国の悩みを言い当てている。つまり中国のような一党独裁国やシンガポールのような権威主義国は、主権とグローバル化の組み合わせで前進できるのに対し、先進国は自国の民主主義に敏感にならざるを得ない分、グローバル化が一層深化すると、トリレンマに陥る。

規制緩和と自由化を軸とする単純なグローバル化主義者は、統治権力=国家主権と結び、この民主主義的側面、ならびにそれを行使する中間層以下の人びとを、えてして『非合理』と軽視してきた。EUもまた、複数の統治権力=国家主権を束ねるところまではよかったが、民衆と民主主義を軽んじた。今起きているのは、やせ細る中間層以下からのしっぺ返しである」(遠藤乾 日経7/28「経済教室」)

「やせ細る中間層以下からのしっぺ返し」を回収するのは、憎悪に満ちた排外主義だけではない。仏国民戦線のルペン党首は、「歯止めのないグローバル化、破壊的な超自由主義、民族国家と国境の消滅を拒む世界的な動きがみられる」という洗練された主張を展開する。国家主権(民族国家、国境)と民主主義で「○○ファースト」「○○を取り戻す」ということだ。

 だがグローバル化に背を向け、主権国家にたてこもって「○○ファースト」で生き残れるのか。それは、さらなる衰退途上国への道ではないのか。国境に壁を築いても勤労層の雇用や所得が増えなかったとき、その怨嗟はどこに向かうのか。そしてたとえグローバル化に背を向けたとしても、一日に五〇〇兆円といわれる国際資本取引をはじめとする影響からは、大国といえども逃れることはできない。

 問題はこう立てられるべきだろう。グローバル化をマネージすることと、国内の再分配政策を再構築することを組み合わせる包括的な構想を、いかにして可能にするかと。

 「トリレンマの解消に魔法の杖はない。現在必要とされることを端的に言えば、グローバル化により置き去りにされた先進国の中流以下の階層に対して実質的な価値を付与し、支援インフラを構築する国内的改良と、放縦のままであるグローバル化をマネージする国際的組織化とを組み合わせることだろう」(遠藤乾「欧州複合危機」中公新書)。

 ここにあるのは直面する課題の普遍性だ。現在トリレンマに苦しんでいるのは先進国だが、グローバル化のマネージや国内の再分配は中進国も含めた課題だ。ギリシャ債務危機、アジア通貨危機など、グローバル化の猛威により晒されるのは中小国であり、またロシア、中国といえども、そこから自由ではありえない。さらにグローバル化を放置したまま「99%対1%」といわれるような格差が野放しにされれば、国内秩序さえ脅かされることになるのは、先進国のみならず中国も本質は同じだろう。

 再分配も同様だ。グローバル化とともに少子高齢化、低成長、脱工業化といった変化に対応した再分配政策の再構築は、先進諸国のみならず中所得国にとっても「明日はわが身」であり、中国とて「他人事」ではいられない。「第一次世界大戦前のグローバル化時代にこそ現代の社会保障制度の起源があるという点は強調しておくべきだ」(「21世紀の不平等」アンソニー・B・アトキンソン 東洋経済新報社)。グローバル化は、こうした国境を超えた課題の普遍性をもたらすといえる。

 さらに温暖化対策のような人類の持続可能性と同時に、エネルギー革命のような要素も含めた普遍的課題も視野に入れるべきだろう。

 こうした普遍的課題を前にして、主権国家に立てこもって「○○ファースト」といっていれば、分断と不信の連鎖のなかで衰退途上国の道を転がり落ちることになる。課題の普遍性に向き合うなかから、課題先進国の道をいかに切り開いていくか。「特権的な5%、リスク意識を高め不安定な75%、社会的に排除された20%」(「分断された社会は乗り越えられるのか」今井貴子 世界9月号)と言われるような社会の分断状況のなかでは、自由や民主主義を人権の尊重や社会的連帯のツールとしてどこまで集積してきたのか、というフォロワーの力が決定的に試される。

 日本における私たちの民主主義(のイノベーション)も、こうした課題を共有している。 

【諦めるなどという贅沢はありません、いいですか?】

 課題先進国への道を可能にする人々の関係性―社会関係資本は、民主主義を人権の尊重や社会的連帯のためのツールとして集積することと一体で形成される。そこにつながる問いの立て方、問題設定とはどのようなものか。反対に、憎悪と対立を増幅するツールとなりうる問いの立て方、問題設定とはどのようなものか。

 立憲主義とは、民主主義が感情に駆られた「多数の暴走」に転じる可能性に対する歴史的な知恵の集積といえるだろう。

 「普通に生きる人々の心の縫い目に沿って物事を考え、そこに見え隠れする切実さから乖離することなく、種々の決め事をするのが民主政治であるとするならば、指導者の人格は、人々の気持ちを救うためのある種の触媒となって、政策的合理だけでは表現できない、その時代を生きる者たちの欲望を引き出すだろう。星の数ほどの悪評をものともせずトランプに6000万人が投票した理由がここにある。

 しかし、人々の感情を動員して最高権力者の地位に就いても、アメリカの政治制度には『大統領が権力を行使しにくいようにするための手枷足枷』が芸術的と呼ぶべき統治制度(多重的なチェック・アンド・バランス/引用者)として待ち構えている。人々の感情の烈風を受けた政治家の人格に、政治が過度に左右されないための建国者たちの工夫である」(岡田憲治 日経ビジネスオンライン11/15)

 多様なプレイヤーに権限を分散させることによって、基本的に過激なことはできない統治システム。ただそれが維持されるために、どうしても失われてはならないものがある。

 「民主政治は人々の気持ちを集約させてリーダーを決める。しかし、そのシステムを死守するためには『いくら民主政治でも絶対にやってはいけないこと』を決めておかなければならない。それは『人間を差別して良いかどうかを投票によって決めること』と『誰に全ての権力を全面的に委ねるかという投票をしてはならないこと』である(人権規定と権力分立)。~中略~そして『これだけは、いくら仲が悪い民主党の馬鹿野郎とも唯一共有するルールだ』という矜持こそ、統治エリートたるものを支えていなければならない」(岡田 同前)

 この矜持を、フォロワーのなかでどこまで共有できるか。それができればできるほど、民主主義の質を高めるために必要な「質のよい悪口」が、生活圏においても可能になる。反対にこの矜持を共有できない度合いで忖度がはびこり、民主主義は人々の尊厳を否定する同調圧力に転じ、憎悪と不信を増幅させる。

 20世紀の工業化社会は太い大きな対立軸で成り立っており、それに沿って形成された政党を媒介に民主政治のモデルが形づくられた。しかし現代の脱工業化社会では、労働者といってもいくつもの集団に分断されている。それらをまとめるような大きな対立軸は存在せず、細かく小さな対立軸しか存在していない。ここから生じる政治的対立を、どのようにして民主主義の質を高める「質のよい悪口」にするか。そうした言論空間―公共空間を、日常的な暮らしや自治の現場でどう作るのか。どうすれば、それが憎悪と不信に転じてしまうのか。この試行錯誤と生きた教訓を手にしよう。その豊富さが民主主義の質を高める。

 来年はヨーロッパではフランス大統領選挙、国民議会選挙、ドイツ連邦議会選挙が予定されている。普遍的課題への挑戦、課題先進国への挑戦としてのEUの正念場であり、自由や民主主義を人権の尊重や社会的連帯のツールとしてどこまで集積してきたのか、というフォロワーの力が試される。

 トランプ現象はアジアにも飛び火するのか。韓国(来年末に大統領選挙)、台湾(今年政権交代)ではトランプに擬せられた人物の人気が高まっているという。その韓国では大統領退陣要求の百万単位のデモが行われているが、そこに渦巻いているのは主権者意識だという。

 「大統領をこの手で選ぶことができる権利をせっかく勝ちとったはずなのに、30年近く経っても、『仕事を任せる分、なぜしっかりとコントロールし、責任を負わせられなかったのか』という慙愧(ざんき)の念。そもそもそんな人物を選んでしまい、『委任と責任の連鎖』という代議制民主主義のメカニズムを利かせられなかったのは、究極的には自分たちのせいだという主権者意識。

 だからこそ、韓国国民はここまで怒っている。つまり、問題なのは、国政介入の真相以上に、『民主化以後の韓国民主主義』『1987年憲法体制』のあり方なのである」(浅羽祐樹・新潟大学教授 読売オンライン11/15)。

 あるいは、大陸と距離をとろうとする蔡英文政権を支持するという台湾のタクシー運転手は、「今度は反対の人の意見を聞いてくれ。民主主義には意見の対立は必要だよ」とさらっと言う。

 こうしたフォロワーの集積があるなかで、擬似トランプ人気のようなものがどれだけの力となるのか、あるいはこうしたフォロワーの動きが既存政党を動かすことができるのか。来年末のタイ総選挙も、タイにおける民主主義の新しいステージが問われるものとなるだろう。

 もうひとつ大事なことは、民主主義はやり直しが効くということだ。どんな政治決定も一度決めたら終わりというものではなく、後から変更可能な「暫定的」なものである、ということが基本原則だ。例えば、EU離脱を決めた国民投票という最高の意思決定も、実行に際しては国会の承認が必要とされるという(高裁判決。最高裁での審理はこれから)。難易度は高いが、その過程での「再考」も不可能ではない。

 「やり直しが効く」という原則はフォロワーの側の内発性、持続性によってこそ担保され、また生かされる。アメリカ大統領選挙の民主党予備選で善戦したサンダース上院議員は、「トランプかクリントンかのどちらかを選ばなくてはならないということに何らかの絶望を感じている支持者と共有したいことはありますか?」と問われて、こう答えている。

 「歴史を見て、今までもこれからも、変化は決して短時間にやってこないのだということを理解してほしいと思います。公民権運動、女性運動、組合運動、ゲイ運動、環境運動などの闘争を見てみると、これらの全ての運動は何年も、何年もかかっており、そして現在でもまだその状態が続いているのだということを理解してほしい。~中略~

 そして、真剣に政治を考えるなら車輪に肩を当てて懸命に車を押し、力を尽くし続ける必要があります。ときには目の前の選択が素晴らしいものでなくても、自分の最善の努力をする。そして選挙の後もその努力を続けるのです。~中略~

 世の中はそうやって動いています。諦めるなどという贅沢はありません、いいですか?」(「世界」12月号)

 国境を超える民主主義のイノベーション、その課題の普遍性は、立憲民主主義の主体性を涵養する自治の現場からこそ見えてくる。「普通に生きる人々の心の縫い目に沿って物事を考え、そこに見え隠れする切実さから乖離することなく、種々の決め事をするのが民主政治である」(前出 岡田)なら、その一番の現場こそ暮らしの現場、自治の現場であり、そこでの人々の「政治的有用感」を繰り返し高めることで、憎悪と不信の連鎖を未然に断ち、当事者性を涵養することこそ、民主主義のイノベーションの根源にほかならないのだから。

(11/13総会での提起、議論の要点も含む。)

(「日本再生」451号 12/1 より)

==================================

囲む会のご案内  「凡庸の善で考え続けるために」

==================================

◆第167回 東京・戸田代表を囲む会【会員限定】

 「パリ協定とCOP22」(仮)

 ゲストスピーカー 明日香壽川・東北大学教授

 11月30日(水)午後6時45分より 【日程が変更されました】

 「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)

 参加費 同人会員1000円/購読会員2000円

 *温暖化防止の新たな国際条約、パリ協定が発効した。批准に出遅れた日本は今年のCOPに

締約国として参加できず。

国連の核兵器禁止条約にも反対。こちらも条約が発効すれば「唯一の被爆国」とは何なのか

が厳しく問われることになる。日本の国際的な立場はどうなっているのかを考えるために。

◆第168回 東京・戸田代表を囲む会【会員限定】

 「民進党がめざすもの」(仮)

 ゲストスピーカー 大島敦・衆議院議員

 12月6日(火)午後6時30分より

 「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)

 参加費 同人会員1000円/購読会員2000円

 *民進党代表選挙で前原氏の選対事務局長を務めた大島議員に、「民進党のこれから」について

  お話しいただく。

◆第169回 東京・戸田代表を囲む会【会員限定】

 「環境・平和・自治・人権~反公害運動からの社会運動の歴史と《今》そして《これから》」

 2017年1月5日(木) 午後6時45分より

 ゲストスピーカー 寺西俊一・日本環境会議理事長 一橋大学名誉教授

 *社会運動が途絶えたといわれるなか、日本環境会議は三十五年以上にわたって

  公害、環境問題を軸に活動してきました。その歴史的な歩みと集積、そのなかで闘いとられた

  「環境・平和・自治・人権」という視点、またこれからの課題などについて、

  同理事長の寺西先生にお話しいただきます。

==================================

◆2016年望年会・東京

 12月23日(金・祝) 午後4時から

 「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)

 参加費 1500円

◆関西政経セミナー特別講演&望年会

 12月7日(水) コープイン京都

 ・特別講演会 午後6時より

 「地球環境×エネルギー×民主主義~私たちはどこまで来て、どこへ向かおうとしているか」

 諸富徹・京都大学教授

 会費 1000円

 ・望年会 午後7時より 

 会費 3500円


石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会

http://www.ganbarou-nippon.ne.jp