H25.3.18
第2期「第9回政経セミナー特別講座」講演録

・ 日時 平25年2月23日(土)午後6時30分
・ 場所 越谷市中央市民会館5階 第4・5会議室
・ テーマ 越谷いちごのブランド化から見えてくる農業のいま
・ 講師 木村友和(いちご工房木村屋代表)
   長柄幸聖(越谷市環境経済部長)
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【パネルディスカッション】
◇何故、いちごの観光農園を越谷で始めたのか
・ 三越百貨店を退職後に農業に従事したいと考えていた。
条件は年間の生活費500万円を確保するために1,000万円の売上が見込めることで、候補と
して花・いちご・トマト・パブリカ等がある中で、素人でも1年目からある程度の収入が見込める
いちごを選んだ。
・ 背景には以前、いちご狩りに出かけた時、観光客の人が言った言葉「こんなにおいしい苺をおなか一杯食べられて今日は一日幸せだわ」に動かされ、人を幸せにできるいちご作りをやってみたいと思ったことがある。
◇いちごのブランド化を目指した越谷市の取り組みはどのように進められたのか
・ 平成17年農政課長に就任、地産地消の農政作りに取り組む。
農業技術センターの成果を生かして都市型農業のモデル作りを模索していた時、いちご観光農園に取り組んでいた木村さんに会い、これは行けると確信し、ここに焦点を絞った。
・ まず、いちご作りを行う人を育てるため、研修制度(生活の心配をせず研修に打ち込めるよう、15万円/月の給料を支給する)を作った。
・ 続いて、ハウス作りに1,000万円以上の費用がかかる初期投資の支援制度を作った。ブランド化は最初からあった訳ではない。
◇いちご農園立ち上げの苦労や障害にはどのようなことがあったか
・ 妻からはいつも事前に相談せずに、一人で決めて突っ走っていることを批判されている。以前、農業に取り組んでいる人で同じような批判を受けていた人がいた。その時自分はこのように話した。新しい事業をやる時、8割の人が賛成したらその仕事はモノにならない。9割の人が反対しているからこそ、やる価値があるのだと。
・ 農業への新規参入のため、土地が無くても農業をやる道がないかどうか、国・県・市に相談したが、その道はなかった。自分の場合は実家が農家だったので、土地の問題は解決できたが、農業を行う上で土地が大きな問題である。
◇農業に取り組む上で、土地・資金はどれくらい必要なのか
・ 農地法は農業従事者と土地は一体であるという概念で作られており、土地を持たない人が農業に従事することは難しい。目安として、5反(5,000m2)以上の土地を持っていることが農地購入の条件になっている。更に農機具の購入にかかる費用も準備しなければならない。
◇越谷いちごのブランド化をどのように考えているか
 <いちご農家の立場から>
・ 行政の考え方はいちごの生産・加工・流通の一体化を目指す戦略と受け止めているが、農家としては市場に出すことや流通に出すことをブランド化と考えているのではない。恩間の農園には年間6,000人のお客さんが来るので、その人達が食事をしたり、ガソリンを入れることで越谷のまちにお金を落とすことが重要と考えている。いちご団地作りは、いちごの需要に対して供給力が追い付いていない現状を改善する有効な方法だと思う。
 <行政の立場から>
・ 越谷は儲かる農業が展開できる地域であり、自信を持って良い。東京から25km圏内にあり、市単独で33万人、5市1町を入れると90万人の人口を擁している。そしてレイクタウンに年間4千万人の人が集まっている地域であり、高収益型農業に適した地域である。
・ いちご団地はH25年度予算で2.5億円をかけ、2haの土地に1,200m2の温室を設置する計画であり、事業を共同で行えるメリットを生かしたい。
◇越谷のいちご農園が生き残る条件、市域の市民の関わり方はどうすればいいか
・ 栃木県の農家と比較すると、先方は「とちおとめ」を1パック(15~18粒)398円でスーパーに出している(25円/粒)。当方は1パック(24粒)3,000円でお客さんと直取引しており(125円/粒)この戦略を続けたい。鎌倉の朝市を参考にして、人が集まる場にいちごケーキ等の販売を考えてみたい。その時は商工会の協力が必要であり、市民によるサポーターチームのような活動も考えてみたい。
・ 行政としては、越谷市の1%の農業人口で、25%の面積を占める農地を保全している意義を考えてもらいたい。平成25年度予算に組み込んだ「いちご団地支援」の2.5億円の内、県や農家の負担分を除いた7百万円が越谷市の持ち出しであり、33万人で割ると20円/人の負担である。この戦略的投資の結果を十分に点検検証して、活気あるまちづくりに寄与する政策としてどうなのか評価して欲しい。

【質疑応答】
Q:農業の振興に関して、一般市民が加わったプロジェクトはあるのか。
A:農業団体連合会やJAと行政との情報や意見交換の場を設けていたが、一般市民との場は設けていない。農業政策に対するパブリックコメントや各種シンポジウムで対応してもらっている。
Q:いちご団地に税金が投入されているので、経営に市民が参加するような形を想定しているのか。
A:形としては、市が温室を作って民間にリースするものなので、現時点では市が直営で管理するように考えている。先々、民間団体との共同出資や市民ファンドによる出資となった時に経営方法を考えて行くべきと思う。
【グループ討議】
<1班>・いちごの売上を伸ばすことだけを目指すのではなく、人が集まることを通じて使う費用が増えることで、越谷市の税収アップに寄与するという考え方に共感した。
・ハウスいちごはどこでもできるので、競争力を高めることが必要だと思った。
<2班>・脱サラから新しい事業に取り組み、一定の収益を上げるまでの取り組みは大変なことだと思った。
・いちご農園にリピーターを作る条件は、複合的な視野で考えるべきではないかと思う。
<4班>・いちご団地は研修生の受け皿としても是非発展させたいと思う。市民参加で越谷いちごのPR、市民ファンドによる資金調達、バリアフリーは実現させたい。
<5班>・木村さんが討議に参加したため、リアルな話が聞けた。お客さんに直売形式で98%を売っていることは驚きであった。スーパーで買ういちごより高いが、レジャーとして別の意味があり、リピーターの条件が現場で作られていることを知った。
・ブランド化された「とちおとめ」は、農協が指定した通りのものを作らざるを得ず、事業者の工夫の余地がないので、越谷と大きな違いがある。
以上